低用量ピル OC/LEPについて

  • 低用量ピル OC/LEPについて

はじめに OC/LEPとは

避妊を目的として使用するいわゆる『ピル』は低用量経口避妊薬(OC:oral contraceptive)という正式名称です。1999年に日本で発売され、女性のバースコントロールや月経のコントロールに貢献してきました。OCには避妊という効果以外にも、月経の痛みや月経量を軽減したり、月経前の多様な症状の改善にも効果があることが知られており、月経困難症の治療薬として2008年以降に相次いで発売されました。そちらをOCと区別して低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP:Low dose estrogen-progestin)と言います。いずれも成分はエストロゲンとプロゲスチン(天然の黄体ホルモンはプロゲステロンと呼び、その作用を持つ物質をプロゲスチンと言います)です。

細かく説明すると、プロゲスチンの種類は四種類(NET:ノルエチステロン、DSG:デゾゲストレル、DRSP:ドロスピレノン、LNG:レボノルゲストレル)あり、エストロゲンは一種類(EE:エチニルエストラジオール)です。配合パターンの違いなどで一相性と三相性に分かれ、ホルモン剤の総量も異なり、これが多様なニーズに対応することを可能にしています。

歴史的に海外では日本より早くOCの利用が開始されたのですが、当時低用量ではなかったので血栓症の副作用報告が相次ぎ、1970年にアメリカ食品医薬局(FDA)がEEの量を50μg未満にするように勧告を出し、低用量化が実現された経緯があります。現在EEが50μg未満のものを低用量OC、50μgのものを中容量OC、それを超えるものを高容量OCと呼んでいます。

メリット、デメリットは?

メリットは、避妊効果以外にも月経痛改善、月経量減少、月経前緊張症/月経前気分不快障害の症状改善、にきび・多毛症改善、卵巣癌・子宮体癌・大腸がんリスク低下など数多くあげられます。

デメリットは、エストロゲンが含まれているので血栓症リスクがあるということと、プロゲスチンが含まれているので脂質上昇が起こりうるということです。特に、血栓症リスクに関しては、割合は高くないものの重篤な合併症ですので、早期発見と早期対応が必要です。

乳がんに関しては発症リスクを増加させるという報告もありましたが、増加しないとする報告もあります。5年以上のOC服用で乳がん死亡がわずかに増加するものの中止後10年以上経過すると差がなくなる、という報告もありましたが、当初使用されていたのは中容量ピルといってエストロゲン量が多いものであり、エストロゲン量が多い方が、乳がんリスクが高くなることが示唆されているので、現在の低用量ピルであれば、わずかなリスクの上昇にとどまるもしくはリスクが増加しない可能性があるのではと予測されており研究途上です。

子宮頚がんに関しては、発症リスクを上昇させる可能性があるとされています。既に感染したHPV(ヒトパピローマウイルス:性交渉によって感染する可能性のある子宮頚がんの原因ウイルス)が体から排除されにくくなることにより子宮頚がん発症リスクの上昇につながっていると推測されています。1000人あたり一人増加するという報告があります。OC服用中止後リスクは減少し、10年以上で非使用者と同等レベルになることが示されています。子宮頚がんリスクや死亡率を減少させるには何より検診と適切な時期のHPVワクチンの併用が大切ですので、そちらを行いOCを内服した場合にリスクは確実に減少させることができると言えます。

血栓症リスクについて

OCを使用すると血栓症リスクが高まりますが、実際どのぐらい変わるのでしょうか。まず、OC非使用者の静脈血栓塞栓症(VTE)発症頻度は1-5人/10000婦人・年間です。これは、一万人の女性が一年間過ごすとVTEを発症するのが1-5人程度である、という意味です。では、OCを使用している一万人の女性は、一年間で何人がVTEを発症するかというと3-9人です(命に関わらないような軽症も含む数です)。一方、OC非使用者の妊婦では5-20人、OC非使用者の産後12週の褥婦では40-65人です。 それだけ妊娠中、産後は血栓症の発生リスクが高いのです。

これを見ると、意外とOCで増加する血栓症は少ない感じがすると思います。とはいえ、起こってしまうと重大な合併症なので、次の症状が生じた場合には内服を速やかに中止し、医療機関をご受診下さい。

  • 激しい頭痛
  • 激しい胸痛、呼吸が苦しい、押しつぶされるような痛み
  • 見えにくい所がある、視野が狭い、舌のもつれ、失神、痙攣、意識障害
  • 激しい腹痛
  • ふくらはぎの痛み、むくみ、押すと痛い、赤い

起こってしまった血栓症は、早期の対応をすることで致命的な状態になることを防げる可能性があります。特に起こりやすいのは開始早期と言われているので、開始から数か月はより慎重になり、体調を気にかけて過ごすことが望ましいです。また、血栓症を発症しないために、こまめに水分を取ったり、同じ姿勢で長時間いることのないように気を付ける対策も良いでしょう。

開始時にはどんな検査が必要?

日本産科婦人科学会のガイドライン上、処方前には必ず問診、血圧測定、体重測定が必要となります。
問診では、OCの使用が難しい基礎疾患が隠れていないかを確認します。
さらにガイドライン上では、血液凝固系検査(採血)、子宮頚がん検査、乳がん検査、子宮・卵巣の超音波検査、性病検査を推奨しています。

OCに関しては、自費診療なので診察が少なくすぐに処方されるクリニックもありますが、当院は細やかな配慮や安全を重視した独自の院内ガイドラインにて、より安心して使用していただけるように工夫しています。OCも1シート2000円からと良心的な価格であり、診察料や指導料などは頂戴しておりません。

どんな風に飲み始めるの?

基本的には月経の5日目までに内服を開始します。避妊効果を確実にするためには、少なくとも5日目までには内服を開始します(卵胞発育の面からは5日目よりは1日目開始の方が抑えられます)。

内服を忘れてしまったら?

内服予定時間から24時間以内に気付いた場合

例)
毎朝9時に内服している方が昼頃に内服を忘れたことに気付いた場合などです。この場合、気付いたときに忘れた一錠をすぐ内服し、次の日から予定通りに内服します。『飲み忘れ分をすぐ内服』+『残りは予定通り内服』が大事です。

避妊で使用している場合、アフターピルが必要かどうか?

アフターピルは通常必要ありませんが、もし同じシート内に既に飲み忘れがある場合や前のシートのの最終実薬週に飲み忘れがある場合にはアフターピルを検討して下さい。

内服予定時間から24時間以上過ぎて気付いた場合

例)
毎朝9時に内服している方が丸一日忘れて次の日の日中に気付いた場合などです。この場合、気付いたときに直近の一錠をすぐ内服し、残りは予定通りに内服します。『飲み忘れのうち直近の1錠をすぐ内服』+『残りは予定通り内服』が大事です。避妊で使用されている場合は、さらに『7錠連続内服ができるまでコンドームを使用するもしくは性交を避ける』ことが必要です。

避妊で使用している場合、アフターピルが必要かどうか?

①第一週に飲み忘れた場合:休薬期間または第一週に性交があればアフターピルを検討
②第二週に飲み忘れた場合:直前7日間に連続して正しく服用した場合にはアフターピルは不要
③第三週に飲み忘れた場合:現在のシートの実薬終了したら休薬せず次のシート開始
※ガイドラインで推奨されている対処法を示していますが、100%の避妊を保証できるものではありません

人工妊娠中絶術後、分娩後、手術前後に関する開始時期について

中絶術後は最短でも10日で排卵が再開された報告があります。ただし、中絶手術直後は血栓症リスクが高い時期ですので、当院では安全のため術後初回診察時まではOCを開始しておりません。術後診察までの時期は術後の回復期でもありますので、性交渉を控えて頂いております。
診察時にOCを希望された方で経過が良好であれば問診で問題がないことを確認し、その日から開始して頂けます。

分娩後に授乳をしている方に関しては、日本のガイドライン上、禁忌となっているため処方を行っておりません。
授乳が終了している方に関しては、血栓症リスクがない方で産後5週以降であれば服用を開始できます。

30分を超える手術に関しては、血栓のリスクが高くなることから少なくとも手術日の4週前から中止が必要です。術後の不動状態もリスクになりますので、その状況が解除されるまでは再開を避けましょう。また不動状態でなくても術後2週間以内は内服できません。緊急手術などの際は必ず主治医にピル内服中であることを伝えましょう。

服用中に月経が来なくなったら?

頻度は1%未満ですがOCで月経様出血がなくなることが起こりえます。まずは、妊娠検査薬で妊娠していないことを確かめます。妊娠していない場合、出血がないことに関しては心配しなくて構いません。

一方、妊娠していることが判明した場合は速やかにOC内服を中止し、婦人科を受診して下さい。妊娠初期のOC内服による催奇形性報告はほぼありません。

何歳から服用できますか?

月経が発来したら内服開始できますが、骨成長への影響を考える必要があります。

骨の両端にある骨端線は最初の排卵の頃に起こる急激なエストロゲン濃度の上昇によって閉鎖をはじめ、徐々に骨成長が止まると言われています。そのため、初経がまだの方には成長を妨げることになるので処方ができません。その方の身長の伸びやOC/LEPの必要性、他の治療との比較などを行い処方の方針を決定しています。

月経周期の確立及び骨成長の終了は15歳前後と言われています。

何歳まで服用できますか?

ガイドライン上は、『健康であれば閉経移行期まで服用可能であるが40歳以上の未閉経者では慎重投与、閉経以降や50歳以上は投与しない』となっています。 40歳以上の方への処方は可能ですが、血栓症や脳血管リスクの上昇は存在します。

当院では、より安全に使用していただくために処方可能年齢を40歳未満としております。40歳以上の方に対しては目的に応じてIUS(ミレーナ)、保険適応のホルモン治療や漢方などへの切り替えをご提案しています。

また、ガイドラインでは喫煙者への処方は、35歳まで(35歳以上では1日15本未満)であれば、慎重投与できるとなっていますが、当院では血栓症リスクを考慮し喫煙されていない方のみへの処方となりますのでご了承下さい。

不妊になったりはしない?

長期に服用しても中止後の妊孕性(妊娠できるちから)に影響はありません。これに関しては多数の大規模な研究がされており、OC中止後8-9割の方が妊娠したという研究報告や内服の有無で妊娠率に差はなかったという報告があります。

また、配合されているプロゲスチンの種類で差がないと報告されています。(エストロゲンの種類は全てエチニルエストラジオールで同一です)

服用終了後3ヶ月以内に90%の方で排卵が再開します。

月経に関する効果は?

子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などを原因とする器質性月経困難症のみでなく、特に病気がないけれど月経痛のある機能性月経困難症に関しても痛みを軽減する効果があります。

また、月経量を減少させる効果があることも証明されています。

子宮内膜症に関する効果は?

子宮内膜症に対しては、月経時のみでなく月経以外の時の下腹痛や腰痛を改善する効果も示されています。月経量も有意に減少しますし、術後の再発予防にも効果があります。

また、卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)を縮小させると考えられています。3㎝以上の卵巣子宮内膜症性嚢胞に対し、LEP投与にて有意な縮小効果があったという結果が得られています。

ただし、腹膜や深部病巣、希少部位の病巣では縮小効果は証明されておりません。

ピルで太るんですか?

OCを内服した人の集団と内服しなかった人の集団を比較し、体重変化を比べたところ、二つの集団の間に体重変化の差がなかったという研究結果が出ているため、ピルで太るという因果関係はないという説明になります。ただ、ピルを開始してから体重が増えて、という訴えで来院されることもありますので、その場合はお話を聞いてピルの可否を決めていきます。片足のみの浮腫などは血栓症を疑う所見ですので、速やかに内服を中止し受診をしましょう。

低用量ピルのQ&A

ピルは誰が使うもの?

目的は、避妊、月経を軽くしたい、卵巣保護、PMS対策、月経移動しやすいから、など、色んな目的で内服できるものです。禁忌事項に当てはまらない場合には使用が可能です。

ピルはどんなもの?

一日一錠、決まった時間に内服する錠剤です。エストロゲンとプロゲスチンというホルモンが含まれており、月経を調節することが可能です。

ピルの値段は?

自費のピルに関しては医療機関によって値段はまちまちです。当院の場合、ピル1シート2000~2300円になります。またピル処方中の検査も医療機関によって値段は変わってきますが、当院の場合、ピル採血は3000円となっています。その他の検査については、症状があれば保険適応となります。

ピルをどうやって選ぶといい?

ピルにはホルモンの量が一定の一相性と自然なホルモン変動に合わせて変化をつけている三相性のものがあります。また、ピルの種類によって、ニキビやPMSに効果があるものや保険適応のあるものなどもありますので、受診される方の訴えによって種類を使い分けております。まずはご相談下さい。

診察が怖いので、検査なしで処方してもらえますか?

当院では、お薬を継続して安全に内服するには定期的な検査が必要と考えています。せっかく通院していただいているのに、必要最小限の検査を行わず病気の発見が遅れることは避けたいことです。ピルの処方がなかったとしても、女性として定期的に診察を受けることはとても大切です。当院では100%女性医師が診察をしますのでご安心ください。

また、当院で継続的にピルの処方を受けている方はオンラインでの処方も可能です。